こんにちは本日のブログ担当です。
本日は今まで読んだ中で一番面白かった本のお話をします。
ジョルジュ・ペレックの『煙滅』という本です。
まず、この本はもとはフランス語で書かれた小説なのですが、実験小説というジャンルのものです。
フランス語の中でもっともよく使われるアルファベットは「e」なのですが、その「e」を一切使わずに書いた、という本なのです。
そうすると「je(私)」なんていう単語も一切使えません。相当な制限の中、登場人物の名前に意味を付加し、章立てに仕掛けを施し、最後には登場人物自身がその仕掛けに気づく、という練りに練られた作品です。
それだけでも驚嘆なのですが、この本を翻訳しようと考えた人がいらっしゃったのです。
そしてフランス語の「e」を外した小説なら日本語に翻訳するときには「い段」つまり「いきしちにひみいりい(ゐ)」を一切使わずに翻訳を行いました。
こうなると「わたし」も使えなくなります。
もちろん不自然なところはありますが、原文の面白さを崩さないどころか更に難しい挑戦をクリアした見事な小説でした。
最後にひとつ、この「煙滅」というのは「煙のように消える」という意味のれっきとした日本語なのですが、もともと「隠滅」という言葉だったそうです。「いんめつ」が「えんめつ」に変化したそうです。
この小説の「い段」を使わない・消してしまうという制限と見事にマッチしたタイトルが、日本語の妙としてとても興味深かった作品でした。